「人間は習慣の集合体である」という有名な言葉があります。
スコットランドの思想家デイヴィッド・ヒュームのこの言葉は、私たちの生活が習慣によって形作られていることを示しています。
毎朝起きて学校や職場に行き、帰宅してから寝るまで、私たちは習慣に従って行動しています。
新しい習慣を身につけることや、既存の習慣を断ち切ることは、とても労力が必要です。
特に優れた人々は、習慣の重要性をよく理解しています。彼らは、日々の積み重ねが将来的に大きな成果をもたらすことを知っています。
しかし、たとえ優れた人物であっても、習慣を身につけることは簡単ではありません。
ここでは、習慣化できない人の特徴と習慣化のコツを考えてみましょう。
思わぬ気づきがあるかもしれませんよ。
習慣化とは?
習慣化とは、簡単に言うと「無意識に繰り返される行動」のことです。
例えば、毎日の歯磨きや車の運転など、私たちが日常的に無意識のうちに行っている行動が習慣とされます。
目覚めが完全でない朝でも歯磨きができ、何かを考えながらでも運転できる(少し危険ですが)のは、これらの行動が習慣として定着しているためです。
私たちの行動のどれくらいが習慣によるものか?
アメリカのデューク大学の研究によると、私たちの行動の約45%は習慣によって決まっていると言われています。
具体例を挙げると、朝、職場へ行く準備をする際に、どの足から靴を履くか、ドアを開ける時にどちらの手を使うか、バッグを持つ時にどちらの手を使うか、エレベーターのボタンを押す際にどちらの手を使うかなど、家を出るだけでも多くの習慣が関与しています。
さらに、私たちの思考や感情も習慣の影響を受けています。
思考や感情が習慣化されていると考えると、私たちの生活が想像以上に習慣に支配されていることがわかります。これは少し考えると恐ろしいかもしれません。
習慣化の5つのメリット
習慣化には、ストレスの軽減から個人の成長に至るまで、多くのメリットがあります。
ここでは、その主なメリットを5つ紹介します。
メリット1. ストレスと不安の軽減
習慣を身につけることで、日常のストレスや不安が減ります。
これは、習慣化によって行動パターンが安定するからです。
例えば、毎朝瞑想をすることで心が落ち着き、仮に心が乱れたとしても、次の日には落ち着きを取り戻すことができます。
これにより、安心感が高まり、ストレスや不安が軽減されます。
メリット2. 個人的成長の加速
習慣を形成することで、自己成長が促進されます。
これは、自分が目指す成長方向に計画的に行動できるからです。
毎日英語を学習する人は、習慣を持たない人に比べて進歩が早いことが一例です。
習慣化することで、個人的な成長が劇的に進むのです。
メリット3. 目標達成への近道
習慣を身につけることで、目標達成がより近づきます。
習慣化とは、小さな行動を積み重ねることで、これがやがて大きな成果につながるからです。
例えば、毎日ランニングする習慣がある人は、マラソンを完走する目標に格段に近づくことができます。
メリット4. 自己効力感の向上
習慣を続けることで、自己効力感が向上します。
これまで続けてきた成果に対する誇りが、自信につながります。
長期間続けている仕事や趣味があれば、その成功が自己効力感をさらに高めるでしょう。
メリット5. 行動の一貫性の確保
習慣を持つことで、行動に一貫性が生まれ、行動のムラがなくなります。
例えば、毎日掃除をする習慣がある人は、その行動が断続的になることが少なく、常に整理整頓された環境を保つことができます。
このように、習慣化は行動の一貫性を保つ上で重要な役割を果たします。
習慣化が難しい人の5つの特徴
習慣化に苦労している人にはいくつかの共通する特徴があります。
以下で、その特徴を5つ挙げ、習慣形成を効果的に行うための理解を深めましょう。
特徴1. 短期的な成果を求めすぎる
習慣を身につける際、すぐに結果が見えないと焦ってしまうことはありませんか?
これは多くの人が経験することですが、短期間での成果を過度に求めると、習慣化の妨げになりがちです。
例えば、ダイエットで短期間に大きな結果を期待しても、すぐには効果が現れないことが多く、そのため早々に挫折してしまうこともあります。
このような期待は、長期的なモチベーションの低下を引き起こす原因になります。
特徴2. 目的が不明確
習慣をつけようとする際、その行動の明確な目的が不可欠です。
目的がはっきりしていないと、その習慣を続ける動機が不安定になり、エネルギーが持続しません。
目的が明確でなければ、行動の一貫性が保てず、習慣化への道は遠のく一方です。
特徴3. 動機づけのみに依存
習慣化において、ただ動機づけに頼るのはリスクが伴います。
動機づけは一時的なもので、その感情がいつ訪れるかは予測がつきません。
単に「やる気が出たら始める」という姿勢では、行動が始まるまでずっと待つことになりがちです。
新しい運動を始める際などは特に、始める動機だけでは継続は難しく、すぐに諦めることになりかねません。
特徴4. 非現実的な目標設定
非現実的な高い目標を設定することも、習慣化を困難にします。
たとえば「1ヶ月で10キロの減量を目指す」などの目標は、達成が難しく、挫折を招きやすいです。
習慣化には、達成可能で現実的な目標設定が必要です。
これにより、習慣を成功させるための基盤を固めることができます。
特徴5. 目標が不明確である
不明確な目標は、具体的なアクションプランを立てることを難しくし、日常の行動指針を定めるのも困難になります。
例えば、「もっと本を読んで知識を深める」というふわっとした目標では、具体的に今日読むべき本や範囲が定まらず、行動に移すのが難しくなります。
これにより、目標の達成が困難となり、達成感も感じにくくなるため、モチベーションの維持が難しくなります。
習慣形成に失敗する5つの理由
習慣形成に失敗する主な理由を5つ挙げて解説します。
これらの理由は単独で影響することもあれば、複数が重なって作用することもあります。
これを理解することで、習慣を身につける際の対策を講じやすくなります。
理由1. 現状維持の誘惑
新しいことを始めるには多くの努力とエネルギーが必要です。
未知のことに挑む際の不安や恐怖から、人はしばしば現状維持を選ぶ傾向にあります。
これは人間の本能的な反応で、新しい習慣を形成する動機が弱まる主な原因です。
現状の快適さを超える動機がない限り、習慣化は難しいと言えます。
理由2. ミニゴールの欠如
ミニゴールとは、大きな目標を達成する途中の小さなステップのことです。
理想を一気に達成しようとすると、途中でエネルギーを使い果たしてしまうことがあります。
ミニゴールを設定しておくと、小さな成功を重ねながら自己効力感を高め、習慣形成を続けやすくなります。
しかし、ミニゴールがないと、習慣化への道のりは進みにくくなります。
理由3. 自己評価が低いため
自己評価が低いと、新しい習慣を身につける自信が湧かないことがあります。
低い自己評価を持つ人は、「自分にはできないかもしれない」というネガティブな先入観を持ちがちです。
このような否定的な思い込みが強いと、自分には無理だと感じる理由が心に浮かび、習慣化を妨げる障壁となります。
理由4. 適切な環境がない
習慣を形成するためには適切な環境が必要です。
例えば、資格試験の勉強をする際に家でテレビやスマホが気を散らすと、集中が困難になります。
対照的に、図書館のような静かな環境では集中しやすく、学習効率も向上します。
環境は習慣形成に大きく影響するため、重要な要素です。
理由5. 目的を見失う
何のために特定の行動を習慣化しようとしているのか、その目的を忘れてしまうと、習慣化の進行が停滞します。
始めは明確な目的があっても、時間が経つと徐々にその目的が不明瞭になることがあります。
行動の意義を見失うと、その活動が無意味に思えてしまい、続けるモチベーションが下がります。
習慣化成功のための10の秘訣
習慣化を成功させるためにはいくつかのコツがあります。
ここでは特に効果的だとされる10の方法をご紹介します。
これらを実践することで、習慣化の成功率を高めることができるでしょう。
コツ1. 新しい行動パターンを設定する
新しい習慣を確立するには、新たな行動パターンの設計が重要です。
例えば、お風呂上がりに資格試験の勉強をしたいと考えている人が、ソファでYouTubeを見てしまう場合を想定します。
この人の現在の行動パターンは以下の通りです。
- お風呂に入る
- ソファに座る
- YouTubeを見る
- 勉強しない
このパターンが定着しているため、ソファに座ると自動的にリラックスモードになり、勉強に手がつけられません。
そこで、行動パターンを変更することが必要です。
お風呂から出た後はソファではなく勉強机に直行するようにしましょう。
変更後の行動パターンは
- お風呂に入る
- 勉強机に座る
- YouTubeを見ない
- 勉強する
この変更により、YouTubeを見る習慣が断ち切られ、勉強に集中できるようになります。
コツ2. 古い行動パターンを解消する
古い行動パターンを解消することで、止めたい習慣を断ち切ることができます。
例えば、勉強机に座ってもスマホでYouTubeを見てしまう場合、この行動パターンを見直します。
- 勉強机に座る
- スマホが目に入る
- YouTubeを見る
- 勉強しない
この問題を解決するため、スマホを目に入らない場所に保管し、可能なら鍵をかけてアクセスを困難にすることが有効です。
改善後の行動パターンは
- 勉強机に座る
- スマホを別の場所に保管し、鍵をかける
- YouTubeを見ない(アクセスが困難)
- 勉強する
このようにスマホが直接目に入らない設定にすることで、YouTube視聴を避け、勉強に集中できる環境を作り出せます。
コツ3. 例外時の対処法を設定する
習慣を成功させるためには、予期せぬ状況に対する対処法を事前に決めておくことが重要です。
例えば、今日1時間勉強する予定でも、体調が悪かったり急な用事が入ったりすることがあります。
そんな時に「翌日に30分追加する」や「昼休みに15分勉強する」といった対応を予め決めておくことで、計画を継続しやすくなります。
事前に対処法を設定していないと、習慣が不規則になりがちで、習慣形成が困難になることがあります。
コツ4. 目標達成の感覚を想像する
目標達成時の喜びを事前に想像することで、モチベーションを高めることができます。
例えば、ダイエットに成功した場面を想像してみてください。
スリムになった自分が新しい服を着て友人と楽しく食事をするシーンや、体力が向上してスポーツの試合で活躍する様子を具体的に思い描くことで、目標に向かう意欲が自然と湧きます。
このように、成功した時のポジティブな感覚を先取りすることで、習慣化の動機付けが強化されます。
コツ5. 過去の成功を活用する
過去の成功体験は、新しい習慣の形成に役立ちます。
もし過去に試験で合格したり、何かで成果を上げたりした経験があれば、その時の喜びや満足感を思い出してみてください。
その感情を詳細に思い返すことで、新しい挑戦に対する自信が生まれます。
このように、過去のポジティブな経験を利用することで、自己効力感が向上し、習慣形成がスムーズに進みます。
コツ6. 目的を常に意識する
習慣を身につける上で、目的を常に意識しておくことが非常に重要です。
目的を忘れると、途中で挫折するリスクが高まります。たとえば、パソコンの壁紙やスマートフォンのロック画面に目的を記した画像を設定するなど、日常生活の中で目的を視界に入れる工夫をすると良いでしょう。
これにより、習慣化への取り組みを継続しやすくなります。
コツ7. 既存の習慣に新しい行動を追加する
新しい習慣を形成する際は、既存の習慣にそれを組み込むと効果的です。
すでにルーチン化している行動の後に新しい習慣を追加することで、新しい習慣も自然と身につきやすくなります。
例えば、朝の歯磨き後に本を少し読む、通勤時に言語学習アプリを開くなど、既存の習慣に新しい行動を取り入れてみましょう。
コツ8. 小さな行動から始める
習慣化を始める際は、大きな目標よりも小さなステップから始めることが推奨されます。
小さな成功を積み重ねることで自信がつき、持続的なモチベーションが維持されます。
はじめは「これでいいのか?」と思うくらい小さな行動からスタートし、徐々に大きな目標に近づけていくのが良いでしょう。
コツ9. 自己語りを前向きに変える
日常的に口にする独り言やつぶやきが、思考や行動に直接影響を及ぼします。
もし自分の言葉がネガティブなものが多いと感じたら、それをポジティブなものに変える試みをしてください。
ポジティブな言葉を使うことで、物事の捉え方が変わり、より良い行動に繋がりやすくなります。
この小さな変化が、気持ちや行動の質の向上につながります。
コツ10. 自分自身を褒める
習慣化の過程で小さな目標を達成したときは、自分自身を積極的に褒めてください。
これにより自己肯定感が高まり、習慣を身につけるためのモチベーションを維持しやすくなります。
自分を褒めることが少し奇妙に感じるかもしれませんが、誰でも褒められると気分が良くなるものです。
自己認識を向上させ、自分自身を肯定することは、新しい習慣を形成する上で非常に重要です。
日常に自分を褒めることを取り入れてみましょう。
まとめ:習慣化で生活の質を向上させよう!
この記事では、習慣化を支援する技術や、習慣化が難しい人の特徴及びその原因について解説しました。
習慣化は、目標達成や自己成長、ストレス軽減に寄与し、生活の質を向上させることができます。
これらの方法を利用しない手はありません。
即座に結果が出るわけではありませんが、正しいアプローチを理解し実践すれば、誰でも習慣化を成功させることが可能です。
提案された方法を試してみれば、習慣化の成功率が向上し、成功がさらなる習慣形成を促す良い循環を生むでしょう。
この記事が新しい習慣を始める一歩となることを願っています。
以下は習慣化を成功させるための主要なポイントです。
- 目的を明確にする:習慣化する行動の目的をはっきりさせ、常に意識することが重要です。
- 行動パターンの変更:古い習慣を断ち切り、新しい行動パターンを設計することで、望ましい習慣へと導く。
- 小さな目標から始める:大きな目標に圧倒されないよう、小さなステップで習慣化に取り組む。
- ポジティブな自己語り:自分自身を積極的に褒めることで、モチベーションを維持し自己効力感を高める。
- 例外時の対応計画:予期せぬ事態が起きた際の対処法を事前に決めておくことで、習慣の継続を支援する。
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