近頃、言葉や態度による心理的な虐待についての議論が増加しています。
この種の虐待は、相手を心理的に押しつぶし、支配する行為をさします。
身体的な暴力が伴わないため、周囲の人々が気付きにくく、被害者自身も自分が原因だと考え、孤独に苦しむケースが多いです。
多くの人が、パートナーとの関係で感じる苦痛が、自分の耐え忍ぶ力の不足や欠点によるものだと思い込んでいます。
しかし、実際には配偶者からの心理的虐待が原因である可能性があります。
では、心理的虐待とは一体どのようなものなのでしょうか？
また、配偶者から虐待を受けている場合には、どのように対処すれば良いのでしょうか。
心理的虐待とは
心理的虐待、別名モラル・ハラスメントは、非倫理的な言葉や行動を使って相手を心理的に傷つけ、制限することを指します。
相手の人格を否定する発言をすることで、肉体的暴力は伴わないものの、精神的に大きなダメージを与えることがあります。
この種の虐待は、夫婦間だけでなく職場や友人関係でも起こりえますが、家庭というプライベートな空間では、他人が気付きにくいため、特に夫婦関係で発生しやすいと言われています。
配偶者による心理的虐待の具体例
配偶者から受ける心理的虐待には、次のような行為が含まれます。
- 満足が得られない時に、相手を数日間完全に無視する
- 家の掃除が不十分だと突然激怒する
- 「家から出て行け」と強い口調で怒鳴る
- 「お前は俺が面倒を見ている」という言葉で相手を見下す
- 「価値のない人間」「消えてしまえ」といった極端な言葉を使う
- 自分の職業について自慢し、威張る
- 喧嘩するとすぐに「離婚」を口に出す
- 友人と会うことを試みると、「家族と友達、どちらが大切か」と怒る
- 経済的なサポートを拒絶し、経済的な虐待を行う
心理的虐待の原因と加害者の心理
では、なぜ人々は心理的虐待を行うのでしょうか？
心理的虐待には主に2つの原因があります。
一つは過度の自信過剰、もう一つは極端な自己不信です。
過保護や過干渉の親に育てられた場合、自分を特別だと思い込むことがあり、批判を受け入れるのが難しくなるため、心理的虐待を行うことがあります。
また、自分に反対する人を敵とみなし、言葉で攻撃することもあります。
一方で、自己不信が強い人は、過去に親から心理的虐待を受けていたり、厳しい家庭環境だったりすることが多く、自信のなさから、自分を守るために相手を虐待することがあります。
このような人は、自分の弱さを隠すために意図的に攻撃的や意地悪な態度をとることがあります。特に配偶者からの虐待の場合は、「相手は自分を愛しているので、どんなにひどいことを言っても許されるだろう」とか、「どれだけ耐えてくれるか試す」という心理が背景にあることもあります。
心理的虐待を行う配偶者の行動特徴
心理的虐待を行う配偶者が示す行動特徴は、以下の通りです。
自分の思い通りにならないと無視する
この種の虐待を行う配偶者は、自分の意にそぐわないことがあると、黙って相手を無視します。
通常の夫婦関係では、意見の違いが生じても、話し合いや議論を通じて解決策を見つけたり、相互に妥協点を探ります。
しかし、心理的虐待を行う配偶者は、無視することで支配しようとし、話し合いを避け、相手の意見を受け入れません。
自分の誤りを認めない
心理的虐待を行う配偶者は、たとえ自分が間違っていても、自分の非を認めることがありません。
すべての責任を配偶者に押し付け、謝罪しない傾向があります。
また、自分が誤った場合でも、その責任を相手に転嫁し、責め立てる様子を見せます。
配偶者の自由を制約する
心理的虐待を行う配偶者は、相手を自分の支配下に置こうとし、その行動を制限します。
外出することすら制限されることがあります。
自分が最優先されないと不機嫌になり、無視するようになることも。
また、配偶者の私物に対しても自分のものとして扱い、必要ないと判断すれば、相手の同意なしに捨てることもあります。
言葉による徹底的な追い詰め
心理的虐待を行う配偶者は、相手を責める際に徹底的に追い込みます。
感情をコントロールできず、自分の怒りが収まるまで相手が謝罪しても許しません。
さらに、古い社会の規範や価値観を盾にして、「配偶者としての役割」「親としての義務」といった言葉を使い、それらに従わない行動を取る配偶者に対して人格を否定するような言葉で攻撃します。
外向きには優れた夫
心理的虐待を行う夫は外では非常に思いやりがあり、親切な態度を示します。
この家の中と外での行動の大きな違いが、他人からは「完璧な夫」と見られる原因となり、配偶者は家庭内での問題を相談しにくくなります。
相談しても周囲に信じてもらえないことがあったり、夫の側に立たれることもあり、孤立感を覚えることがあります。
心理的虐待に対処する5つの方法
心理的虐待を受けている場合、どのように対応すべきでしょうか。
対処方法1．過度な反応を避ける
心理的虐待をする夫は、言葉での攻撃や無視によって、配偶者が苦しむ様子を見て自分の優位を感じます。
そのため、夫から酷い言葉を投げかけられても、過度に反応しないことで夫を動揺させる効果があります。
ただし、完全に無視すると逆効果になる可能性もあるので、あくまで落ち着いて聞き流す程度の反応が望ましいです。
対処方法2．他人へ相談する
外向きに良い夫を演じるため、配偶者は相談するのをためらいがちですが、一人で抱え込むだけでは状況は好転しません。
信頼できる人に相談することで、ストレスの軽減につながることがあります。
しかし、夫の職場関係者や共通の知人には影響を及ぼす可能性があるため、慎重に選ぶことが大切です。
夫婦関係の問題に精通したカウンセラーに相談するのも一つの選択肢です。
対処方法3．別居や離婚を検討する
心理的虐待をする夫は、どんなにひどいことを言っても配偶者が去らないと思っていることがあります。
別居や離婚の可能性を示唆することで、夫に危機感を与え、態度を改めさせる可能性があります。
「距離を置きたい」「このままでは離婚を考える」といった表現を用いることで、夫に自分の行動を見直す機会を与えるかもしれません。
対処方法4．心理的虐待の自覚を促すチェックリスト作成
心理的虐待を行う配偶者は、自分がそのような行動をしていることに気づいていないことが多く、自分の行動が相手にどのような影響を与えているかを理解していない場合があります。
そのため、心理的虐待に関連する行動を一覧にしたチェックリストを作成し、該当する行動に印を付けることで、配偶者に自分の行動を自覚させることが大切です。
具体的な行動例を挙げて「これが私を悲しませている」「これは心理的虐待に当たる」と伝え、改善を求めることが効果的です。
対処方法5．心理的虐待の証拠を残す
心理的虐待の行動を指摘しても、配偶者がそれを否定することがあります。
そうした場合に備えて、会話の録音などの証拠を残しておくことは有効です。
これらの証拠があれば、将来的に離婚を考慮する際にも役立ちますし、証拠があることを知った配偶者はより慎重に行動する可能性があります。
心理的虐待を止める方法
配偶者からの心理的虐待を止めるためには、まずはしっかりと話し合うことが大切です。
配偶者が自分の行動を自覚していない場合、話し合いを通じて理解を深め、行動の改善が期待できます。
しかし、話し合いが効果をもたらさない場合、距離を置くことも考慮に入れるべきです。
一時的に実家に戻る、または別居することで、配偶者も事態を冷静に受け止めるかもしれません。
それでも状況が改善されない場合は、離婚を含む対処法を検討する必要がありますが、最初に専門家に相談し、具体的な行動計画について冷静に考えることが推奨されます。
まとめ：心理的虐待の概要
心理的虐待は、肉体的な暴力が伴わないため、周囲が気づきにくく、被害者自身も自分が原因ではないかと錯覚し、助けを求めることが難しくなりがちです。
もし配偶者と一緒にいる時間が苦痛で、自分が抑圧されていると感じるなら、それは心理的虐待である可能性が高いです。
周囲に相談できる人がいない場合は、専門のカウンセリングや公的な相談機関の無料サポートを利用することをお勧めします。
この記事の重要ポイントは次の通りです。
- 心理的虐待は気付きにくい
- 虐待の自覚促進にはチェックリストと証拠の保持
- 対処法：話し合い、相談、距離を置く
- 改善がない場合は専門家相談と離婚検討
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